最近、当事務所に寄せられる債務整理相談の中で、よく登場するのがこの不動産担保ローンです。(雑誌広告などでも、よく見かけます。)
不動産担保ローンとは、不動産の担保(抵当権・根抵当権の設定)を条件に高額の融資をすることの総称ですが、昨今は特に増えています。その理由は、消費者から見れば、『高額な融資を受けることができ、借金の一本化が可能である(毎月の返済金額の低減)』・『金利が低くなる』という利点があり、一方貸金業者も、相次ぐ過払い金返還請求等による貸し倒れのリスクを抑えられる商品の必要性があるため、昨今では、いままで無担保を売りにしてきた大手消費者金融もこの不動産担保ローンを行っているのが現状です。
しかし、不動産担保ローンには、今までなかった新たなリスクを伴うことを充分理解し、おまとめローンと同様、今後の生活設計をしっかり立てることが必要です。
担保不動産が住宅以外であれば格別、実際に自分が居住している住宅に担保権を設定することが多いかと思います。その住居が競売にかけられるということは、通常転居をしなければなりません。
むしろ、ほぼ満額に近い借金が残ることが多いかと思います。通常は住宅ローン等の当該債務に優先する負債がまだ残っている為、実際に住宅の競売が行われ、住宅を手放したとしても、この負債はほとんど減らずに残るでしょう。
例えば、毎月25%もの金利を数社に対して支払っている人から見れば、金利9%になり、かつ借金の一本化により毎月の返済金額も低減するとあれば、魅力的です。しかし、不動産担保ローンによる借入金額は、通常数万円程度のものではなく、数百万〜数千万であるかと思います。その場合は、額面上の金利が下がったとしても、依然として利息の負担は高額になることに変わりはないということをしっかりと認識する必要があります。
当事務所に寄せられる相談から当職が思うことは、多くの方が、安易にこの不動産担保ローンを利用しているということです。
多くの場合、不動産担保ローンを申込む以前に既に何らかの債務整理手続をとる必要性がある(債務整理手続をとることにより、経済状況を抜本的に解決できる)にもかかわらず、債務整理手続に対する誤解や無知から、一本化の魅力に魅せられ、不動産担保ローンを利用しているのです。
ですが、経済状況との悪化等が原因で返済が困難になったとき、債務整理を行おうとしても、確実にその選択肢は狭まってしまいます。
従い、不動産担保ローンやおまとめローンの利用を考える場合には、まずは債務整理手続を考えてみることが必要なのではないでしょうか。
もちろん、ケースによりますが、相手方には「抵当権」と言う強力な武器があるので、その攻撃をかわしながら交渉を行っていくことは我々でも容易ではありません。ましてや、それが住宅であるということであると、攻撃を受けた際のダメージは大きいわけです。
借金が高額の場合でも、民事再生手続を行うことで、大幅に借金を減らすことができ、さらに住宅ローン特則の利用により、住宅を失わずに負債状況を改善することができます。しかし、住宅に住宅ローン以外の担保権が設定されている場合には、この『住宅ローン特則』の利用が認められないため、住宅を手放さずに、負債を抜本的に解決することは困難となります。
無論、債務整理手続にも、一定のリスクがあります。(債務整理のデメリット)
重要なのは、不動産担保ローンによるリスクと債務整理によるリスクのどちらをリスクを受け入れることが、これからの長い人生をよりよいものに近づけることができるのか、慎重に判断することです。